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取組の方向3 自分の生き方を見出すキャリア教育の推進
   情報化、グローバル化、少子高齢化等、社会環境が大きく変化することに伴い、雇用の多様化・ 流動化が生じ、子供たち自らの将来の捉え方にも大きな変化が生じてきている。一方で、子供た ちの勤労観や職業観の確立における遅れが指摘され、社会的・職業的自立に課題が生じている。
   平成 11 年 12 月に中央教育審議会で取りまとめられた「初等中等教育と高等教育の接続の改 善について(答申)」において、初めて「キャリア教育」という用語が登場して以来、政府、地 方自治体、教育界、産業界が一体となり、子供たちのキャリア形成を促し、若者が社会的・職業 的に自立するための取組が行われてきた。
〇     また、平成 18 年 12 月に改正された教育基本法第2条第2項には「個人の価値を尊重して、 その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連 を重視し、勤労を重んじる態度を養うこと」が規定され、義務教育の目的について規定した同法 第5条第2項では「義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会 において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な 資質を養うことを目的として行われるものとする」と定められた。
   翌年、改正された学校教育法においては、教育基本法を踏まえ、第 21 条(義務教育の目標) において、第1項「学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意 識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与す る態度を養うこと」、第4項「家族と家庭の役割、生活に必要な衣、食、住、情報、産業その他 の事項について基礎的な理解と技能を養うこと」、第 10 項「職業についての基礎的な知識と技能、 勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと」が定められた。
〇     この法改正を踏まえ、平成 20 年 3 月に公示された学習指導要領には、随所にキャリア教育が 目指す目標や内容が盛り込まれている。しかし、キャリア教育を「新しい教育活動を指すもので はない」としてきたことにより、学校現場においては進路を選択することに重点が置かれている と解釈されるとともに、体験的な学習を通じた勤労観・職業観の育成にのみ焦点が絞られてしま い、社会的・職業的自立のために必要な能力の育成がやや軽視されてしまうという課題が生じた。
   これらの課題を解決するとともに、人々の生涯にわたるキャリア形成を支援するため、幼児 期から高等教育に至るまで体系的なキャリア教育を推進し、社会的・職業的自立に向けた基盤 となる能力や態度を育成することを目指し、平成 23 年 1 月に中央教育審議会において、「今後 の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」が取りまとめられた。答申 においては、キャリア教育を充実・推進するため、具体的な充実方策や各学校段階における指 導のポイント、地域・社会、産業界との連携等について言及されている。また、キャリア教育 において育成する能力の内容を「人間関係・社会形成能力」「自己理解・自己管理能力」「課題 対応能力」「キャリアプランニング能力」の四つに整理した基礎的・汎用的能力として示された。 22
〇     全国学力・学習状況調査によれば、キャリアプランニングの入口にあたる「将来の夢や目標を もっていますか」の設問に対し、5割弱の子供たちが「当てはまる」と答えている一方で、3割 近くの子供たちが夢や目標をもてないでいる。 ◯  労働力調査(総務省)によれば、若者の完全失業率は年々低下し、正規雇用が増加傾向にある ものの平成 30 年度には、非正規雇用者数が正規雇用者数を上回った。
   厚生労働省の平成 30 年度の調査によれば、新規学卒就職者の早期離職率は、依然として高い ことが分かる。中学卒で6割、高校卒で4割弱、大学卒で3割が、就職後 3 年以内で離職している。 離職理由を見ると、キャリア教育で育成を目指している基礎的・汎用的能力が十分身に付いてい ないと推察できる。
取組の必要性 
〇   子供たちが、社会人、職業人として自立していくために必要な基盤となる能力や態度を育成し、 キャリア発達を促すキャリア教育は、今後ますます重要になってくる。また、キャリア教育の実 施にあたっては、社会や職業に関わる現場における体験的な学習の機会を設け、子供たちに自分 自身と社会の仕組などについて多様な気付きや発見を得させることが重要である。このことが、 子供たちが基礎的・汎用的能力を獲得することにつながる。
〇   また、子供たちのキャリアが段階を追って発達していくことを踏まえ、幼児期の教育から高等 教育に至るまで系統的にキャリア教育を進めることが必要である。初等中等教育の中間に位置す る中学校教育においては、小学校及び高等学校におけるキャリア教育における指導内容等を踏ま え、中学校段階で取り組むべき発達課題を明らかにし、キャリア教育を展開していく必要がある。
   併せて、中学校における進路指導が、中学校卒業後の進路選択だけに止まることなく、将来の 職業生活を考えた上で、子供たち一人一人の将来を十分に見据えたものとなるように質的転換を 図る必要がある。
 提言3 キャリア教育
社会における自分の役割や将来の生き方・働き方について主体的に考えさせる。
目標を立てて計画的に取り組む態度を育成する。
    ・肯定的自己理解と自己有用感の獲得
  ・興味・関心に基づく勤労観・職業観の形成
  ・進路計画の立案と暫定的選択
  ・生き方や進路に関する現実的探索
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