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取組の方向6 生涯にわたり健康で安全に過ごすための資質・能力を育む健康教育・安全教育の充実
現状と課題 
    子供たちを取り巻く社会環境や生活環境の変化は、生活習慣の乱れ、メンタルヘルスに関する 課題、薬物乱用、性の問題行動など、子供たちの心身の健康に大きな影響を与えている。
   このことを裏付けるように、中学校における 1 校当たりの 1 日平均の保健室利用者数は、平 均すると 19 人となり、心身の健康問題のため、養護教諭が健康相談等で、継続支援した事例の 有無について有りと回答した割合は、79.2% に上る。また、継続支援した月当たりの実人数は、 平均 45.2 人となっている。併せて、心の健康に関する相談内容も多岐にわたっている。
〇   食は、人間が生きていくための基本的な営みであり、健康的な生活を送り、健康な心身を育む ためには、健全な食生活が欠かせない。しかし、核家族化や共働きの増加などによる食生活を取 り巻く家庭環境の変化や外食や調理済み食品の利用増加による食品流通の変化に伴い、食行動が 多様化してきた。その結果、偏った栄養摂取による肥満傾向の増加、過度の痩身傾向の増加をは じめ、生活習慣病の若年化などの健康問題が生じている。
   子供たちの安全を取り巻く状況を見てみると、毎年、多数の事故が発生している。平成 29 年 度における災害共済給付状況によれば、中学校において捻挫、打撲、骨折等の負傷などが約 31 万件発生している。また、交通事故における 10 歳から 19 歳の負傷者数は、減少傾向にあるも のの平成 30 年度では、負傷者数全体の 8.5% に当たる約 45,000 人が被害にあっている。
      急速な情報化の進展により、子供たちが、スマートフォンや PC を利用する機会が増加し、子 供たちがネット犯罪に巻き込まれるケースが増加している。また、SNS によるトラブルやいじ め問題など情報モラルに関わる新たな健全育成上の課題も増加傾向にある。
      平成 7 年 1 月 17 日に発生した阪神・淡路大震災は、死者 6,434 人、負傷者約 43,000 人、全・ 半壊した家屋は 249,000 棟、火災による罹災世帯約 89,000 世帯という甚大な被害をもたらし た。避難者は、ピーク時で約 316,000 人を数え、多くの学校が休校し、避難所として使われた。 この広域大規模災害を通し、自助、共助の重要性が再認識され、「助けられる人から助ける人へ」 をキーワードとした防災教育が広まった。
      阪神・淡路大震災発生から 16 年後、平成 23 年 3 月 11 日、宮城県牡鹿半島の東南東沖を震 源とする東日本大震災が発生し、死者・行方不明者 18,428 人という多くの尊い命が奪われ、こ の中には中学生 105 人も含まれている。また、全・半壊した家屋は約 404,000 棟、この中には、 公立中学校 1,652 棟も含まれている。避難者は、地震発生直後のピーク時で 470,000 人を超えた。    この未曾有の大震災を契機に防災教育・減災教育の見直しが図られ、各中学校では、様々な防 災等に関する教育活動が行われている。全日本中学校長会の調査によれば、避難訓練の充実など 校内における取組は進んでいるが、家庭や地域と連携した取組が進んでいないことが分かる。
     阪神・淡路大震災、東日本大震災の例を見るまでもなく、広域大規模災害が発生した場合、学 校は、避難所となる。平成 31 年 4 月 1 日現在の文部科学省の調査によれば、94.9% の公立小 中学校が避難所に指定されている。しかし、その中で学校施設の利用計画を策定している学校は、 35 第2章 取組の方向 51.1% にとどまっている。
取組の必要性  
〇     健康と体力は「生きる力」の基礎であり、心身の健康が人々の活力を支えるとともに、社会全 体の活力源となる。学校においては、子供たちの健康・安全の保持増進に第一義的な責任をもつ 保護者と連携し、子供たちの健康や安全を確保し、生涯にわたり心身の健康を育み、安全を確保 することができるよう基礎的な素養を身に付けさせることが求められている。
 〇    多様化、深刻化している子供たちの現代的な健康課題を解決するためには、養護教諭を学校保 健活動推進のための中核としながらも、校内組織体制を確立し、家庭、地域、関係諸機関との適 切な役割分担とともに、連携して取り組んでいく必要がある。 ◯  自分の心身の健康に関心をもつとともに、情報化の進展により氾濫する健康に関する情報の中 から正しい情報を選択し、選択した情報を健康の保持増進のために活用できる能力の育成が必要 である。
 〇    子供たちが、将来にわたって健康に生活できるようにするためには、家庭と連携した食育の推 進を通して、望ましい食習慣を形成する必要がある。また、食をめぐる環境変化に対応し、健全 な食生活を送ることができるようにするためには、食育の充実を通して、子供たちに食に関する 自己管理能力を身に付けさせる必要がある。併せて、食育の更なる充実を図るため、栄養教諭の 配置を推進していく必要がある。
〇      子供たちの安全を守るために、家庭、地域と連携を図り、学校内外の安全な環境を整備すると ともに、生活安全、交通安全、災害安全の各分野において、安全管理の取組を進める必要がある。 また、子供たちが、安全に関する情報を正しく判断し、行動に結び付けることができるようにす る必要がある。
   地震などの災害を含め、自然災害から自らの命を守り「助けられる人から助ける人」になるた めに、避難訓練に止まらず、防災知識を身に付けるための体系的な防災教育の充実を図るととも に、共助のための地域社会と連携した取組を推進していく必要がある
提言6 健康教育・安全教育
 〇    学校生活をはじめ、生涯にわたって健康で安全な生活を送るために必要な資質・能力を育む。
〇      健康情報や性に関する情報、新型コロナウイルス感染症など不測の事態に関する情報等を正し く選択して適切に行動できる資質・能力を育む。
 〇     自然災害の発生や、情報化やグローバル化等の社会の変化による安全に関する環境変化を踏ま え、起こり得る危険を予見し、いかなる状況下でも自らの命を守り抜く資質・能力を育む。

  ・自分の体と健康に対して関心を高め、健康に過ごすための資質・能力を育む
  健康教育の推進   
  ・健康を意識した食に関する指導の充実
  ・情報技術が急速に進化していく時代にふさわしい情報モラル教育の推進  
  ・いかなる状況下でも自らの命を守る自助とともに、自分自身が社会の中で
  何ができるのかを考えさせる共助の視点からの防災教育の推進
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