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取組の方向8 生徒一人一人が安心して過ごすことのできる学校の実現
   全国の中学校(国公私立)におけるいじめの認知件数は、平成 24 年度から3年間減少傾向にあっ たが、平成 27 年度から増加に転じ、平成 29 年度には、前年度比 13%増の 80,424 件となった。 また、1校当たりの認知件数も 7.7 件となり、いじめはどこの学校においても起こり得る状況に ある。いじめの認知件数を学年別に見ると、学年が進行するに連れて減少する傾向にある。これ は、男女ともに同じ傾向を示している。また、毎年、自らの命を絶つ生徒がいる。そして、その 要因としていじめ問題が平成 29 年度は 7.1%を占めている。
   平成 23 年 10 月、大津市内の中学 2 年生がいじめを苦に自らの命を絶った。この事件では、 学校や教育委員会の対応が問題となったことから教育再生実行会議が数回の提言を行い、これら の提言を踏まえ、平成 25 年9月に「いじめ防止対策推進法」が成立した。
〇     同法 28 条において、次のとおり重大事態が規定された。

・いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害を生じた疑いがあ ると認めるとき
・いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀無くされてい る疑いがあると認めるとき
   「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によれば、同法第28条第1項に 規定する重大事態は、平成26年度の発生件数をピークに減少したが、再び増加傾向に転じ、3年連続で 増加している。同法に基づき、各教育委員会、各学校では、いじめ防止基本方針を定め、いじめ防止等の 対策を講じるための組織を設置するなど、いじめ防止、早期発見・解決のための取組を進めてきた。また、 全日本中学校長会においても、同法成立以前にいじめに関する調査を実施したり、緊急アピールを発信し たり、いじめ根絶のための取組を行ってきた。しかし、調査結果に見るとおり、いじめの認知件数は、増 加傾向にあり、いじめを苦に自らの命を絶つ生徒も後を絶たず、いじめ問題は、看過できない状況にある。
〇     このような状況を踏まえ、いじめの根絶に立ち向かうため、全日本中学校長会では、令和元年 6月「いじめ問題に関する自己点検」を実施した。
   自己点検により次のような課題が明らかになった。

・いじめの定義について理解する、各校で策定した「いじめ防止基本方針」について見直しを図 るなど、「いじめ防止対策推進法」に基づく取組に課題がある。
・直接、いじめ防止につながる活動については、よく取り組まれているが、コミュニケーション 能力を育むための活動、社会性を育む体験活動、校内の言語環境を整えるなどのいじめの予防 につながる間接的な活動の取組に課題がある。
・いじめの早期発見・早期対応を実現するための校内組織は整えられているが、相談体制の整備 に課題がある。
・いじめ問題の根絶には、社会全体で取り組む必要があるが、家庭、地域社会との連携・協力体 制に課題がある。
取組の必要性 
〇   経済や文化など社会のあらゆる分野でのつながりが国境や地域を超えて活性化し、多様な人々 や地域同士のつながりは緊密化を増している。このようにグローバル化は我々の社会に多様化を もたらした。
〇     このような社会では、自分の価値を認識するとともに、相手の価値を尊重し、多様な人々と協 働しながら社会的変化を乗り越えて、よりよい人生とよりよい社会を築いていこうとすることが 大切である。
   そのためには、対話や議論を通じて、自分の考えを根拠に基づき伝えるとともに、他者の考え を理解して自分の考えを深めたり、集団としての考えを発展させたり、他者への思いやりをもっ て多様な人々と協働したりできる力を子供たちに身に付けさせる教育を目指す必要がある。
〇     しかし、いじめは重大な人権侵害であるとともに、対話や議論を忌み、相手の価値を否定し、 多様性を拒絶し、人格を否定する行為であり、私たちが目指す教育と対極の行為である。
〇     私たちは、教育に携わる者として、いじめは愚劣な行為であり、未来に向けて何も生み出さな いこと、そして人間を、社会を破壊する行為であることを子供たちに教えなくてはならない。ま た、保護者及び地域等と連携し、その根絶に取り組む責務がある
提言8 いじめ防止
   いじめは重大な人権侵害であるとともに、他者の人格を否定し、多様性を認めようとしない行為 であり、これから目指す教育と対極にあることを認識し、その防止と解消に全力をあげて取り組む。
   学習活動や学校生活の場となる学級において、安心して学習に取り組むとともに、安心して生 活できるように学級経営の充実を図る。
・いじめ防止対策推進法の遵守    
・S.C、S.S.W 等と連携した組織的対応による、いじめの早期発見と早期解消    
・互いに尊重し、認め合うとともに、対立の解消に主体的に取り組む態度の育成    
・教育委員会、児童相談所、子供家庭支援センター等、関係機関との連携強化    
・全ての教育活動との関連を図った道徳教育の推進(再掲)による「心の教育」と「自他の 生命を大切にする教育」の充実    
・言語による自己表現力と他者理解力の育成    
・SNS の功罪を理解し、コミュニケーションツールとして正しく活用できる力を育む情報 モラル教育の一層の充実
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