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は じ め に
 全日本中学校長会は、全国の公立中学校において、校長が教育改革推進の当事者として、学校経 営方針等の策定、教育課程の編成・実施等に取り組む際に、指針となることを願い、平成 21 年に「全 日中教育ビジョン ― 学校からの教育改革」を策定・公表しました。
 それから 10 年が経過し、この間、社会情勢や中学校教育を取り巻く状況は大きく変化しました。 社会や経済におけるグローバル化や情報化が大きく進展し、多様性や利便性をもたらし、私たちの ライフスタイルにも大きな変化をもたらしました。また、都市化・過疎化の進行、核家族化やひと り親家庭の増加などの家族形態の変容、価値観やライフスタイルの多様化は、地域社会等のつなが りや支え合いの希薄化をもたらしました。
 令和 3 年度に全面実施を控えた新学習指導要領においては、変化の激しい予測困難な時代にあっ ても、子供たちが予測できない変化に対し、主体的に向き合って関わり合い、自らの可能性を発揮 して未来社会を創り出す「生きる力」としての資質・能力を育むことが求められています。一方で、 いじめや暴力等の問題行動の発生、不登校生徒の増加などが見られ、その要因は多様化、複雑化 しています。また、情報化の進展に伴い、様々な情報が氾濫する中、薬害による健康被害やネット 犯罪において中学生が加害者や被害者になるなどの新たな課題も生じています。併せて、特別な支 援を必要とする生徒は、年々増加傾向にあり、グローバル化による人の流動により、日本語指導を 必要とする生徒も増加傾向にあり、生徒一人一人のニーズに応じた教育の充実が求められています。 このように課題が山積する状況にあっても、教員が新たな教育課題に立ち向かい、教員としての職 務を確実に遂行していくためには、学校における働き方改革を推進し、教員が生徒と向き合える時 間を確保するとともに、教員一人一人がもっている力を高め発揮できる環境を構築する必要があり ます。しかし、学校に課せられた使命と学校を取り巻く課題は、質的にも量的にも既に学校教育だ けで対応することは、極めて困難な状況に至っています。
 このような困難な状況にあっても、私たち校長は、未来社会の担い手である生徒を育てるために 立ち止まることはできません。教育改革を推進し、よりよい学校教育がよりよい社会を創るという 教育の目標を社会と共有し、学校を核とした社会総がかりで教育課題に取り組む場を創り出してい かなくてはなりません。そのためには、校長が、自らの言葉で自身のビジョンを学校内外に伝える 必要があります。その際に本ビジョンが全国の会員の皆様の参考となるとともに一つの指針となる ことを願って策定いたしました。
 令和2年 5 月 全日本中学校長会
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